第四話 対決! エレイン vs 獄猟犬

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 一方グラウンドでは――、 「俺はお前を【ピーーーー(自主規制)】! 俺とお前で【ピーーーー(自主規制)】! オオオオーーーイェェアアアアーーーーー!!」  片手にマイクを持った、全身サイボーグの男が自主規制まみれの歌を熱唱していた。  サイボーグ男の背後には、肉やら野菜やらが敷き詰められた焚火台が置かれ、そこでは全身青タイツで仮面をかぶったアメリカンコミックのヒーローのコスプレをした大男がトングで具材をひっくり返していた。 「バーベキューは我がアメリカの伝統的家庭料理ッ!! 常に家長が取り仕切るものッ! そして此度のバーベキューをリードする資格を持つのは、人々を守り、世界を平和へと導くスーパーヒーローのみッ! それが私ッ! それが、グレィィィト・ガードヌゥアアーーーー……!」  二メートルを超えるガチムチ青タイツのこの男――グレイト・ガートナーことG・Gは『KMA(ノウマ)』である。  パンドラの力で現世に顕現した、アメリカンコミック『アメイジングソード』の登場人物(キャラ)であり、自身をスーパーヒーローと名乗り振舞もソレのようであるが、主人公の『アメイジングソード』と対を為すれっきとした悪役(ヴィラン)である。  アメリカ生まれアメリカ育ちという〝設定〟を持つ彼は、いくら簡素とはいえ自国の伝統料理といえるバーベキューに対しては並々ならぬこだわりがある。 「ムムゥッ!? しかしこの野菜どもは肉を焼くのに邪魔だなッ! バーベキューに野菜を焼くなど我がアメリカの伝統と歴史への侮辱ッ! 今すぐにでも落っことして燃やしてやりたぁぁーーーいのだッ!!」 「おーい、G・G。肉もいいけど野菜が好きってヤツもいるんだぜ。頼むからキチンと焼いてくれよな~! 嫌なら変わるぜ?」  背後から聞こえてきたG・Gの不穏な叫びを心配したサイボーグ男が歌を中断してG・Gに問うが、この程度の逆境でへこたれるスーパーヒーローではない。 「……いやッ! 任せてくれ曹長(サージェント)犬亦(いぬまた)ッ! ……そう、そうだともッ! 今は〝多様性〟の時代ッ! 憎きヴィラン……いや、菜食主義者(ヴィ―ガン)もまた私が守るべきピープルッ! 私はスーパーヒーローとして大きな間違いを犯すところだったッ!! ありがとう友よッ!」 「お、おう。なんだかわかんねーけど、頑張れ。んじゃ俺も歌うか」 「任せろッ! さぁゆくぞッ! グレイトォォォーーーー・スプレッドスパイスバスタァァァーーーーー!!(香辛料投下」  必殺技名を叫び、台のお肉に秘伝の香辛料を振り振りしまくってる楽しそうなG・Gと、 「お前の【ピーーー(自主規制)】に俺は【ピーーー(自主規制)】【ピーーー(自主規制)】【ピーーー(自主規制)】【ピーーー(自主規制)】ぇぇぇぇーーーーーーーー!!」  再び歌い出したサイボーグ男――犬亦を取り囲むように、タンクトップなど私服姿の男たちがグラウンドに胡坐をかき、酒を飲んだり惣菜やお菓子を食べながら談笑したりと、さながら騒がしいパーティのような様相を呈していた。
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