第二話 〝神殺し〟はパフェが好き(前編)

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 王見帝舞。43歳。  彼は、困惑していた。  否、恐怖していると言っていい。  目の前には、1500円の『びっくりゴッドパフェ』という名前の特盛フルーツパフェがある。  量がふつうのパフェより多いということ以外、なんら変哲もないパフェである。働き盛りの壮年である帝舞なら、ぺろりと平らげるのは造作もない。  しかし、  帝舞が持つ長柄のパフェスプーンがふるふると震える。震えてしまう。  眼前のパフェを食べる。ただそれだけのことに、43歳の日本帝国元帥は戸惑い、困惑し、恐怖していた。  冷や汗なのか脂汗なのか……帝舞のシャツの内側がじんわりと湿り気を帯びる。背中にシャツがはりつき、脇から冷たい汗が流れおちる。  ――どうすれば、いい? どうして、こうなった……?  これは、一人の男の戦いの物語。  恐怖と〝強面〟のおっさんに立ち向かう、胡散臭いおっさんの物語。
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