第二話 〝神殺し〟はパフェが好き(前編)

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『みつば』という看板を掲げた、こ洒落た木造の喫茶店。  帝舞と神那がドアを開けて中に入ると、女子学生やOLで賑わう店内が出迎えた。  時刻は昼。ランチタイムだったり、買い物途中のちょっとした一息だったりと、女性客は談笑に花を咲かせている。 「……神那くん。いつも、キミ、ここに来てるの?」 「いつもではありませんが、ここにしか来ません」 「ああ、そう……」  そんな場所に、むさくるしい男性客が二人。  一人は胡散臭い髭のおっさんと、もう一人は筋骨隆々の強面の大男(しかも花柄シャツ)。  つまり……場違いにもほどがある。 「……なにかご不満でも」 「い、いや? なんか女性客多くないかな~って思ってさぁ?」 「……それがなにか」  しかし神那はまったく気にしていないようである。帝舞は女性は好きだが、女性がたくさんいる場所というのはあまり好きではない。  気恥ずかしいというか、気後れするからだ。意外とデリケートな43歳である。 「いらっしゃいませー、二名様ですか?」  そんな帝舞のたじろぎなどおかまいなく、女性店員が接客してくる。  帝舞より先に神那が「はい」と頷くと、店員は二人を席へと案内する。  仕方なく帝舞は神那とともに席に座る。テーブルをはさんで向かい合う。 「ご注文があればお呼びください」  と、女性店員が去ろうとしたしたとき… 「すいません、『びっくりゴッドパフェ』をふたつ」  と、神那が呼び止めつつ、注文する。さすがは常連の固定客である。すでに脳内では何を頼むかを決めていたようだった。  だが、『ふたつ』というのはつまり帝舞の分ということだろうか。〝新規客〟の帝舞もさすがに待ったをかける。 「神那くん。もう少し、私に選ばせてくれても」  選ぶ権利もなく勝手に注文されたのだ。帝舞はそこに対して不満がある。しかし―― 「いえ、これは自分の分です。閣下はお好きなものをどうぞ」  ……帝舞の勘違いだった。
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