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サラの言葉を遮って、魔王が大地を揺るがすような声を発した。
「おい、こっちを見ろ!」
とうとう魔王が本気になったのだと思って二人とも身構えた。
「マジカルバナナ〜バナナといったら黄色〜黄色といったら勇者の炎〜勇者の炎といったら強い〜強いといったら魔王〜」
二人とも急に始まったマジカルバナナに声が出ないほど驚いた。
「なんか一人で陽気にマジカルバナナやっているけど懐かしいね」
「魔王が頑張っている姿が健気で泣けてくるわ。倒れたのに自分のことを強いと言ってて、応援したくなったわ」
二人で仲間にしようかと思っている時に気づいた。
「二人ずつしか戦闘に出れないシステムだから、仲間になっても、どちらかやられるまでは、馬車の中で待機してもらうことになるね」
「そうだったわ。仲間になっても馬車の中から出られ……」
「馬車でいい」
魔王が必死過ぎて悲しくなった。
「魔王、本当にそれでいいの?」
魔王が純真無垢な表情で頷いた。
狭い馬車の中で魔王は体を小さくして落ちないようにしていた。
こうして、初めて魔王を馬車に乗せた俺達の旅が始まった。
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