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何年の時が過ぎたのかしら。
私はもう、人生をあきらめていた。
視界が暗闇に慣れ過ぎていて、今さら光なんて見られない。そんな眩しいもの、見たくない。そう思っていた。
感情が麻痺、しているのかもしれない。
そんなある日。
不意に聞こえた、ゴトゴトッという物音。
また、あの時期がやってきたのね……。
虚ろにそう思っていると、真っ暗だった部屋に突然、光が差した。
「え……」
眩しい。目が痛い。
だけどそこには、ずっと会いたかったあなたが立っていた。
「うそ……」
私を外に出してくれるの?
もうずっと、何年も顔をあわせていなかった私を。
もう一度、あなたと光の中で笑えるの?
嬉しくて嬉しくて、思わず涙がこぼれた。
数年ぶりに、私は外へ出た。
他の部屋の人たちにも会った。たくさん笑って、歌って、夢のようだった。
あなたは私を懐かしむように、じっと見つめてくれた。そして、太陽のような笑顔で「きれいだね」って言ってくれたの。
ああ、嬉しい。幸せ。
私、あなたのために生きてきてよかった。
……だけど、私を愛おしそうに見つめるその顔は、どこか切なげだった。
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