わたしを捨てないで

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「私ね、今まで気がついてなかったんだけど、をずっと溜め続けていたの。その感情が降り積もり続けて、限界に達したら、爆発するしかない」  ああ。そう。この感情。 「『怒り』」  あなたは私を見て、目に涙を浮かべながら震えている。 「ご、ごめんなさ……。許し……」  この感情は、私の心を闇のように真っ黒に染め上げ、体さえも支配していく。艶のあった黒髪はどんどん伸びていき、爪は刃物のように尖り、口は耳まで裂け、視界は真っ赤に染まる。  やっと私を、ちゃんと見てくれたね。  でも、もう遅い。  あなたに殺されるくらいなら、私はあなたを……。  床まで伸びた髪であなたの体に巻きつき、宙に浮かびながら、その顔の前まで行く。 「大好きだったよ」  この爪が喉元を切り裂くと同時に、悲鳴があがる。  ああ。あなたの血って、とってもあたたかいのね。  あなたの体内にあったモノ、あなたの命の証をこの体中に浴びて、私はあなたを感じるの。とても気持ちいいわ…………。  もっと切り裂こうかしら。もっと。もっと……。  何度も切り裂いた後、動かなくなったあなたを見て、私は穏やかに微笑んだ。 「さようなら……」
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