司書見習いの来店

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たおやかに顔をあげた連珠の姿に、藍墨兎はあらためて見とれた。背に流したままのまっすぐな髪は腰のあたりで切りそろえられ、端正で不潔な感じがない。目鼻立ちはくっきりしているが優美で、南方の直線的な美と北方の曲線的な美が融和したような不思議な印象を与えた。女性的な美貌のようにも見えるが、清々しい白の長衫をまとったすらりとした長身といい、ところどころ骨張った手足といい、男性だからこその美しさでもある。いにしえの文人がもてはやした美男子はきっとこんな姿をしていたのだろう。 連珠に不思議そうに見つめ返され、藍墨兎はハッと我に返って頭を下げた。 「す、すみません不躾に。おれは藍墨兎です。宜苑(ぎえん)図書館の司書見習いで……今日は、万年筆とインクを求めに来ました」 そう告げると、連珠は微笑んでうなずく。 「司書にとって、万年筆とインクは大切な武器ですからね。念を入れて選ぶとしましょう」 藍墨兎はうつむき、また唇をかみしめた。 「……先輩に、特に万年筆は手に馴染むほど良いと言われたので、急いであつらえにきたんです。その……解釈演習に、ひどく負けて」 打ち明けていると、恥ずかしさと悔しさで涙さえにじんでくる。連珠は黙って、訥々と語る藍墨兎の言葉に耳を傾けていた。 「わかっているんです……借り物の武器だから負けたんじゃない。おれが未熟で、解釈が甘いから先輩には勝てない……でも、絶対、勝てるようになりたいんです。だから、おれにぴったりの万年筆をください。解釈を磨いて、最強の司書になれるように」 勢いに任せて言い切ると、連珠は真正面から藍墨兎の言葉を受け止めて嬉しそうに笑った。 「ええ、きっとその気持ちを忘れなければ、必ず文学を守る司書になれますよ。そのお手伝いができたら、私も光栄です」
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