5:護衛

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 獣村に入るためには、3つのゲートを通過しなければならない。1つ目のゲートは通行証を渡す。ま、これは簡単だ。あたしはゲートの番人に通行証を渡した。当然、通過だ。1つ目のゲートを通過して行く。周りは何にもなく、ただ深い森が広がっている。森のせいか、あたりは薄暗く不気味である。  「行くわよ」  「…」  あたしたちは2時間くらい歩き進んで行く。本当なら、車を使いたいところだけど目立つといけないから歩かなければならない。本当、面倒だよね。  「クロちゃん、何歳?」  暇なので、クロちゃんに話し掛ける。  「12歳」  「え、まだ若いじゃない!」  「玲さんも若いんじゃない?」  初めて、あたしの名前を呼んでくれた。  「あら、嬉しいわ」    あたしも女なので、若いと言われるのは嬉しいものだ。  「あ、2つ目のゲートに着いたわね」  2つ目のゲートは先ほどの1つ目のゲートと違い、問題を解かないと通れない。2つ目のゲートの番人に自分の名前を告げる。  「玲様ですね。では、問題を出します」  まぁ、あたしくらいの頭脳なら解けるレベルの問題なので楽勝だ。そして、2つ目のゲートが開かれた。深い森がより一層深い森となり、時間も夕暮れ時なので余計暗くなる。  「ずっと、気になってたんだけど」  あたしはクロちゃんが付けている狼のお面に指差した。  「いつまで、それ付けているつもり?あたしには顔見せないの?」  「上からの命令でむやみに顔を見せるなと言われているから」  「ふーん、そう」  これ以上聞いても、答えてくれそうにないので、あたしは聞くのをやめた。 もう時刻は夜。春だけど、やはり夜は冷える。肌寒い風が吹いて、森を揺らす。葉っぱ同士が触れる音が、人の話し声に聞こえる。  「あ、3つ目のゲートだわ」  かすかな光が目の先にあり、それが3つ目のゲートだと分かった。しかし、3つ目のゲートがなんなのかは知らない。あたしが知っているのは、2つ目のゲートまでであって、その先のことは知らない。ここでたじろぐようでは、警察庁としての名が廃る。  「玲さん、少し待って」  先を進めようとしたあたしを、クロちゃんが止めた。振り向いて、クロちゃんを見ると、狼のお面の向こうから、黄金色の双眸がギロリと光った。  「どうしたの?行くわよ」  「ここから先は、オレから離れないで」  クロちゃんはあたしの前に立ち、しっかりとした足取りで歩き始めた。  「…分かったわ」  3つ目のゲートに到着し、門番を探すが見当たらない。  「門番、いないわね」  「ここに門番はいらないのさ」  「どうして?」  「危険な場所だから」  重々しい音を立てて、3つ目のゲートが開いた。その向こうには、闇だけが広がっていた。先ほどの2つ目のゲートとは比べ物にならないほど、空気がひんやりとしていて、重い。  「ここから先は、怪物とか獣とかうじゃうじゃいるから、気をつけなよ」  「…え」  「行くよ!オレにしっかり掴まってて!!」
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