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俺、増岡圭太は記者をやっている。元々は刑事をやっていたが、とある事件により刑事を続ける自信がなくなり、記者になった。
俺はいわゆるフリーの記者で、テーマはそれぞれだ。今、俺が気になっているのは、最近現れた“漆黒の狼”だ。記者をやっていると、嫌でも情報が入ってくるのだ。風のように現れ、人間たちを襲う怪物や獣を討伐する怪物がいるという目撃証言をよく聞く。
“漆黒の狼”が生まれ育ったという、日本で話題の《隔離区域》に訪れた。《隔離区域》は秩序がなく、何が起きるか分からない場所である。
一ヶ月前に戦争があり、酷い様だったが、それでも復興は進んでいて、落ち着きを取り戻したようだった。
《隔離区域》は前もって、番犬の許可を得られれば、入ることができる。俺は番犬に許可を得たので、入ることにした。
重い空気に、暗い空、血の臭い、人の死体。ここが《隔離区域》なんだという改めて実感した。
そこで、俺はインタビューをすることにした。
「“漆黒の狼”がここに生まれ育ったと聞いたのですが、どんな人物なのですか?」
《隔離区域》に住む住人はこう言ったのだ。
「“漆黒の狼”とは、誰からも祝福されず、嫌われ、孤立した狼のことである」
と。更に、こうも答えた。
「そして、忌み子だ」
老婆は不気味な笑みを浮かべ、俺に囁いた。
「くれぐれも、出会した狼に喰われないように―――…」
と。
住人たちは口を揃えて、「忌み子」だと言った。住人たちが恐れた“漆黒の狼”とは、どのようにして生まれたのだろうか。
「あの…記者ですか?」
若い女性に話しかけられた。女性は“漆黒の狼”の母親の友人らしい。
「“漆黒の狼”は狼と人間の間に生まれた半人間です。可哀想で、醜い子です」
「半人間…」
「ええ。私は殺人を犯してしまい、《隔離区域》に捨てられました。そんな時、ある美しい女性と出会いました」
「女性?」
「ええ。“漆黒の狼”の母親です」
「その母親は今、どこに?」
女性は悲しそうな顔をした。
「死にました。政府の手によって」
「……」
悲惨な過去を持つ“漆黒の狼”。俺は“漆黒の狼”に会ってみたいという気持ちがさらに強まった。
「“漆黒の狼”の容姿だけでも、教えてくれませんか?」
「ええ。先程で醜いと言いましたが、それは違う意味での醜いです。あの子はとても美しい容姿をしていました。犯罪者や獣人間などで溢れている《隔離区域》ではあの子の存在は毒でした。黄金色の瞳に、右頬に目立つ傷がある少年みたいな子です」
急いで、メモをする。
「赤の混じった黒髪で、月明かりに照らされると綺麗に煌めく。小さくて、細くて…」
そこで女性は止めた。
「どうしました?」
「…あの子は、きっと人間を恨んでいます。いつどこで、私たちを襲うか、分かりません」
震えだす女性。
「私たちはあの子を蔑み、虐げました。私たちの罪は一生消えません」
女性からはもうこれ以上は情報を引き出せそうにない。
「そうですか。分かりました。協力、感謝します」
俺は頭を下げ、女性と別れた。メモを見て、謎が深まる“漆黒の狼”。
「そこのお兄さん!」
明るい声が聞こえ、後ろを振り返ると、金髪の青年が笑って立っていた。
「あんた、“漆黒の狼さん”を探しているんすよね?」
「そうですが…あなたは?」
「うーん。“漆黒の狼”の行く道を見守る者ですかね」
ヘラヘラとした笑みを浮かべる青年。彼は“漆黒の狼”をよく知る人物のようだ。
「“漆黒の狼”を知っているんですか?」
「まぁね。俺も《ここ》の住人っすからね。ところで、“漆黒の狼”の居場所、知りたくないっすか?」
「…知っているのか」
思わず敬語が崩れてしまった。青年は笑って、言った。
「獣村に行ってみ。そこに“漆黒の狼”はいるから」
「俺の名前は増岡圭太だ。記者をやっている。お前を俺の情報屋にしたいんだが、いいか?」
青年はすぐに、「いいっすよ!」とあっさり承諾したのだった。
「お前のことをなんと呼べばいい?」
青年はニヤリと笑い、執事みたいにお辞儀をした。
「鈴とでも、呼んでください」
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