ホワイトアウト

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「雪が落ち着いてから降りよう」  中級コースのリフトを降りた所で彼が言った。確かに午後に入って細かな雪が降ってきたが、滑れないという程ではない。 「まだ行けそうですよ?」  リフトを降りた人達が滑っていく背中を見た。 「でも、スノボは今日が初めてなんだろう?」 「午前中にたっぷり練習しましたし、スキーはまあまあ滑れるので大丈夫ですよ」  本当は雪国育ちで小さい頃から親しんでいたスキーは得意だった。おどけて見せたが、彼の表情はどこか暗い。 「ーーそこの休憩所で温かいコーヒーでも飲もう」  彼にしては歯切れが悪い言い方だ。彼の方が休憩したかったのだと気付き頷くと、ほっとしたように歩いて行く。何となく歩き方がぎこちない。 「もしかして足ひねっちゃいました?」 「いや、ちょっと違和感あるくらいでーーレンタルしたブーツが合わなかったかな。ごめん。もっと滑りたいよな。少し休めば行けるから」  申し訳なさそうにしている彼を傷つけない言葉を探して、結局「はい」とだけ返事をする。 「そこに座っていて。何がいい?」 「あ、じゃあコーヒーで」 「了解」  彼は自動販売機でホットコーヒーを二つ買って私の隣に腰掛けた。 「はい」  コーヒーのいい香りで緊張が和らいできた。 「あの、足が痛いって言ってくれていいんですよ」 「そうだね。ごめん。良い所、見せたかったんだ」  微笑んだ彼の前髪から水滴が落ちるのを綺麗だなと思った。 「格好良かったですよ」  急に恥ずかしくなって俯くと、ゴーグルからどさりと雪が落ちた。 「外の雪、もう少しかな」  窓の外を見つめる彼は室温のせいか頬が赤い。 おわり
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