13.一滴の雫。

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 細い(あご)を掴み、男の顔を傾けさせる。  白い首筋に薄っすらと残る傷痕が、(あらわ)になった。  俺が()んだ、傷痕。  俺が男の首筋に刻んだ、傷痕。  酸素を求める魚のように、小さく開いた口の中に唾液が(あふ)れ、舌がそれを渇望(かつぼう)した。  男の首筋に、傷痕に、舌を()わせる。 「やめろよっ」    体を突き返した腕を掴み、強張(こわば)った唇の端に軽く唇を当てる。 「な?」  男の目を覗き込む。 「うぜぇ。とっとと帰れよ」 「帰らねぇ」  手を振りほどこうと、男の腕に力が入る。  そんなもの、簡単に放すつもりは更々ない。  腕を強く掴み、引き寄せ、体勢が崩れた男の体を無理やり胸の中に収めた。    そして、強く抱き締める。  男の体が壊れてしまいそうなくらい、強く……、抱き締めた。  欲しいんだよ……。  欲しくて、欲しくて、堪んねぇんだよ。  心も体も。  お前の丸ごと全部が、欲しくて欲しくて、堪んねぇんだよ……。  でも、今は……。  肩に感じた、柔らかい重み……。  それだけでいい。  今は、それだけで……、充分だ……。   お  わ  り
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