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彼がオレのことを見てくれている。話しかけてくれている。
でも、頭が働かない。
声は聞こえているのに、何を言っているのか、全く理解できなかった。
オレは今、どんな表情をしているんだろう。ちゃんと話せているんだろうか。
――オレに向けられていた視線が、ふっと横へ動く。
と、何かに気付いたみたいに彼は一瞬だけ驚いた顔をし、オレではないどこかに向かって、軽く会釈をした。
「あ、こんにちは。あの、お――」
「中、入ってもらったら? どうぞ」
いつからそこに居たのか、すぐ横で男の声がし、男の手が肩に触れた瞬間、オレは思い出したように息を吸い込んだ。
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