2-1.来訪。

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 彼がオレのことを見てくれている。話しかけてくれている。  でも、頭が働かない。  声は聞こえているのに、何を言っているのか、全く理解できなかった。  オレは今、どんな表情をしているんだろう。ちゃんと話せているんだろうか。 ――オレに向けられていた視線が、ふっと横へ動く。  と、何かに気付いたみたいに彼は一瞬だけ驚いた顔をし、オレではないどこかに向かって、軽く会釈(えしゃく)をした。 「あ、こんにちは。あの、お――」 「中、入ってもらったら? どうぞ」  いつからそこに居たのか、すぐ横で男の声がし、男の手が肩に触れた瞬間、オレは思い出したように息を吸い込んだ。
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