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雪の夜
朝から降っていた雪は、夜になる頃にはすっかり積もってしまっていた。
室内の暖房をつけていても、寒い。
僕と彼氏は、ちょっとだけ窮屈なベッドの中でくっついて暖を取っていた。
「子供の頃はさ、雪が降ったらめっちゃ嬉しかったのに……大人になったら嫌なことだらけだな。道は滑るし、電車もバスも動かないし」
「ふふ、でも大人の楽しみ方ってのもあるよね」
「どんな?」
僕は、彼氏の足の裏に自分の足の裏をくっつけた。彼氏は悲鳴を上げる。
「つ、つ、冷たっ! なにすんだよ、馬鹿!」
「えへへ。悪戯」
「パジャマから出てる部分をくっつけるのは無し!」
「うーん。でも……」
僕は彼氏に顔を近付ける。
「パジャマから出てる部分が駄目なら、くちびるもアウトだよね?」
「ぐっ……」
「キス、出来ないよ?」
数十秒見つめ合って、なんとなくな流れでお互いのくちびるをくっつけ合った。
「……くちびるはあったかいから、セーフ」
「冷えてるでしょ?」
「あったかい」
またくちびるが重なる。
今度は、大人の深いキスだった。
「……寝よう。明日、早く出ないといけないし」
「休んじゃおうよ」
「馬鹿」
ふふっと笑い合って、部屋の照明を落とした。
明日は交通機関がマヒしているだろうから、本当に早く出ないとね。
「……また天気が良くなったらさ」
「何?」
「いや……」
「ふふ。もっとくっつこうね。雪が溶けたら」
そう言って僕は彼氏の胸に顔を寄せた。
あったかい。
ずっと、こうしていたいな。
黙って抱きしめてくれるその腕の感触を確かめながら、僕は目を閉じた。
降り積もる雪。外は静か。
たまにはこんな夜も悪く無いな。
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