ノンストップ! オカルト科学同好会

2/7

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「いや、しかしですよ」  (不純な)動機は理解したが、ボクらに何ができるのかというと。 「どうやって盗撮犯(てき)を見つけるんです?」 「どうやってとは?」  面倒臭げな低い声。 「だって、カメラ抱えてナメクジみたいに窓際に張り付いているようなマヌケならとっくの昔に見つかってますし、最近は100メートル先からでも撮影可能な高性能レンズもあると聞きますよ?」  学校の周りは適度に開けた住宅街でアパートもある。犯人の居場所を簡単に特定するのは難しいと思うが。まして盗撮は現行犯でひっ捕まえないと『貰ったデータだ』と言い逃れされる危険もある。 「何……100メートルだと?」  伊沖会長の眼がギラリと光る。 「ふざけるな! そんなからの撮影なぞ言語道断! 盗撮道を極めんとするなら、何でもっと攻めんのだ! 私のオカルト科学をもってするならば、1キロ先からでもなぁ……」 「狙撃手(ゴ○ゴ13)じゃあるまいし! ボクらは暗殺屋(テロリスト)じゃないんですから」  まさかそんな所でマウントをとってくるとは。 「ふふん! 私が開発した目玉型ドローン『ギョロリ』の霊的エネルギー認識センサーを使えば、例え対象が壁の向こうにあろうとも実体を検知し……」 「……いや、勝負ごとじゃないですし。そーゆーワケの分からない技術を振り回して騒ぎを起こすのは止めてくださいよ? 前回のアレで懲り々なんですから」    「前回? ああ、『透明人間シロップ』か」  途端に会長の機嫌が悪くなる。  先月、会長が突然「透明人間になれる薬を開発した」と学校にアヤしい小瓶を持ち込んだのだ。  ボクに「実験台になれ」と迫ったのだが、極めて丁重にお断り申し上げたところ「この意気地なしめが。ならば自分で試してみる」と、その薬を飲んでみせた。いや、最初からそうしろと。  確かに『効果』はあった。液中のナノマシンが発する励起電場のなんちゃらがどうとかで着衣まで見事に消えた。そこで気を良くした会長が止めりゃいいのに「ちょっと散歩してくる」と飛び出したのである。  そして悲劇は起こった。  途中でシロップの効果が薄れ、ビミョーに透明度が下がったのだ。そのため、着衣や皮膚は透明なままに、内蔵や筋肉だけが『見える』形になり……。 「うぎゃぁぁ!」という悲鳴とともに女生徒が逃げ出すのを見て、会長も何が起きたのか理解したらしい。 「しまったぁぁ!」と叫びながら『筋肉と内臓』が廊下を爆走。その姿を目撃されて校舎が大混乱に陥った。  慌てて会長を準備室に押し込むと同時に、奥にあった人体模型を廊下に投げだして『これです! これが走ってました!』と誤魔化したのだ。 「可哀想に。あのせいで人体模型さんは無実の罪なのに、近所のお寺さんに持ち込んでご祈祷の上でお焚き上げになったんですから。少しは反省してくださいね」  会長は頬を膨らましたまま、ぷいっと横を向いていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加