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嗚呼、何故ボクはここにいるんだろうか。
たった2人しか所属していない、この『オカルト科学同好会』なんぞに。
「おい上杉、何をボーっしてやがる! いいか? それで、その盗撮犯をトッ捕まえようってんだよ。この『オカルト科学同好会』で……いや、この私がだ!」
部室代わりに(黙認で)使わせて貰っている理科準備室。その机の上に膝丈のスカートでドッカリと座り込んでエラソーにしているのが、この同好会の会長で2年生の伊沖先輩である。
「おい、聞いてるのか上杉!」
「……すいません、冒頭辺りを聞き逃したんですが」
何しろ会長の話はいつも突然に始まるのだ。
「はぁ? 何だよそれ! じゃぁ中程は聞いてたのか?」
「適当に」
「最後ら辺は?」
「それなりには」
「何にも聞いてねぇじゃねぇぇかぁぁ!」
怒鳴り声とともにボクのネクタイを絞り上げる。
「会長様のありがたいお話を何と心得るのか! この不届き平会員めが! そんなことだから我が同好会はちっともメンバーが増えなくて部活に昇格できんのだぞ!」
「待ってくださいって! 要は、最近噂になっている女子部活の盗撮犯をとっ捕まえようって話でしょ?」
そう。ここ最近、新体操部や水泳部の練習風景、またはテニス部などが教室や部室で着替えている姿を盗撮している輩が出没しているのだ。撮影された動画データが男子の間で密かに出回っていることは判明してるのだが、その出処は誰にも分かっていない。
「でもですね」
やっと離してもらった制服をパンパンと叩く。
「その件については生徒会が直々に動いているじゃないですか。ボクらが勝手に動いても迷惑なんじゃ?」
「ふふん! だからよ」
にんまりと嫌らしい目つきで、伊沖会長が顎をしゃくりあげる。
「生徒会が手こずっている難事件を我が同好会が『解決した』となればどうなる?」
「なるほど。部活に昇格……」
「違う!」
ビシリっと、ボクの鼻先に人差し指を突きつける。
「生徒会長である黒麻先輩の覚えがめでたくなるだろーが! この私がぁ!」」
「あ……ああ、そういう……」
生徒会長の黒麻先輩と言えばスラッとした長身に甘いマスク、テストの学年順位も常に5番以内と『高校男子モテ要素』の全てを兼ね備えた完璧超人なのだ。当然、憧れる女子も多い。
……うちの会長様も、『その一人』。
黒麻先輩は『自分が付き合う女子は自らが認めて口説きたいと思った相手のみ』と仰せで、すりよる女子の尽くをハネつけておられる硬派である。
「ここはひとつ私の実力を示して、お近付きになるチャンスを掴み取ろうという作戦なのだよ!」
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