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僕の名前はミケ。自然に囲まれた大きな家で、大好きなおばあちゃんと暮らしている。
おばあちゃんには、二年くらい前に出会った。まだら模様の毛が汚いと捨てられ、お腹を空かせていたら抱き上げてくれた。そうして家に招いてくれて、温かいご飯もくれて――その日から共に時間を重ねてきた。
「ミケちゃん、ご飯よー。おいでぇ」
おばあちゃんの声が聞こえ、一先ず返事する。それから、すぐに駆け寄った。おばあちゃんは目が見えないらしいけど、僕のことだけは見えていると思う。
置かれたいつもの猫まんまを確認し、太ももにすり寄る。おばあちゃんは、可愛いねと言いながら僕を撫でた。吸い付くような愛撫に大きく喉を鳴らした。
静かで心地よい家があり、美味しいご飯がある。毎日穏やかな愛情で包み、可愛がってくれる人がいる。
大好きなおばあちゃんと二人でいられて、僕は世界一幸せな猫だ。
ただ、世界一幸せなのは僕だけであって。
「ミケちゃん、これしかなくてごめんねぇ。我慢してね」
舌を唸らせていた僕の耳、いつもの台詞が落ちてくる。おばあちゃんは、毎日こうやって僕に謝った。僕としてはどれだけ食べても飽きない味だが、おばあちゃんは美味しくないと思っているのだろう。
だから今日も、一生懸命「最高に美味しいです」と伝えた。あまり伝わっていない気もするが。
「じゃあ私は縁側にいるね」
おばあちゃんの寂しそうな顔に、僕まで寂しくなった。
この家にはお金がないらしい。だから贅沢をさせてあげられないと、何度も聞いた。助けてくれる家族もいないらしく、おばあちゃんはよく寂しそうに庭の風を浴びている。丸い背中が不安げに見えた。
おばあちゃん、大好きだよ。ご飯を終え、そう言いながら寄り添う。おばあちゃんは皺くちゃの顔に花を咲かせ、優しく背中を撫でてくれた。
「可愛いね。ミケちゃん、可愛いね。ミケちゃんは私の天使よ」
僕でも、大好きなおばあちゃんを助けられたらいいのに。
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