殴り書きの不定期短編集

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学生の時、アパートの隣に住んでいたのが、 八畳一間に病気で寝たきりに近いお母さんと、高齢のお婆さんと、中学生の娘さんと言う一家。 とにかくちっちゃくて痩せていて、ちゃんと食べているのかなって感じの女の子。 けど明るくて、元気に挨拶とかしてくれて。 なんとなく仲良くなった。 学校終わったら真っすぐ帰ってきて、お母さんとお婆さんの身の回りのことやってた。 収入は生活保護しかない状態で、生活はかなり切り詰めている感じだった。 彼女の家、テレビはあったけど冷暖房の家電は無いし、電話もなかった。 制服以外の服二着しか持ってなかったし、いつも制服のスカートだった。 髪もシャンプー使わず石鹸だったみたいだし、自分で切ってた。 彼女の家の事知ると同情みたいな感情わいてきたけど、なるべく普通に接した。 だんだん親しくなると土日の休みとか俺の部屋に遊びに来るようになって、宿題見たげたり一緒にゲームしたり、そんな時は笑ったりちょっと怒ったりホントにフツーの女の子だった。 けど、ある日バイトから帰ってみるとドアの前で待ってて 「〇日に絶対返すから千円貸してください」って。 何か様子が変だったから「どうしたの?」って聞いたら顔真っ赤にして、 「・・・生理始まっちゃったけどナプキン無くなっちゃったから・・・、あは。」 聞いたこと物凄い後悔したし自分を責めたよ・・・。 千円と言われたけど千円札がないと言い張って五千円札押し付けた。 夜の八時くらいだったけど、多分コンビニ行ってすぐ戻ってきて、 「残りは〇日まで待ってください」って、4千円返しに来た。 返さなくていいよ、なんて言える感じでもなくて、黙って頷いた。 お母さん達には内緒って言われはしたけど、お母さんはやっぱり気がついてたみたいで。 次の日、体調よかったのか朝ゴミ出ししてるお母さんに会った。 「・・・お世話になってしまって。」って、何度も何度も頭を下げて。 十八のガキだった俺に。 「俺も色々教えてもらってますから。お互い様ですよ。」 実際ゴミ出しとか分別とかやった事無くて、 適当詰め込んで出したら駄目出しされたりした。 全く知らない街なので銀行やらスーパーやらの場所も一通り教えて貰った。 友人知人の全くいない街だったので、彼女に教えて貰って凄く助かった。 そんな事を話したと思う。 お母さんはやっと少し微笑んでくれて、 「また遊んでやって下さい」ってまた頭下げて。 立ち話してると、制服姿の彼女が鞄持っておりてきた。 「おはようございます。」 って元気な挨拶してくれた。いつもの彼女だった。 「あれ?早くない?」 「今日、日直なんです」 短い会話かわして、送り出した。 「・・・よく笑うようになってくれたんですよ。」 お母さんが、嬉しそうに言って、また頭下げた。 貸した千円は、ちゃんと言った日に返ってきた。 「あは。ホント助かりました。」 恥ずかしそうにそう言って、笑った。
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