完璧な先輩

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店長に店内のあちこちを案内された後、 「芳賀ぁー、お前がいろいろ教えてあげてー」 店長の一声で芳賀さんが私の指導係になった! 他の人はなんか怖そうだったから芳賀さんで本当に嬉しかった。 「まずはドリンクとお通しの作り方ね。ドリンクの種類とかわかっていればホールに出た時もオーダーとりやすいからね。」 芳賀さんはお酒や料理のことが何もわからない私にも丁寧に教えてくれた。 「オーダー入ってからじゃなくて、ほら、入店の音と人数確認してる声がここだとよく聞こえるでしょ?この時点で今来た人数分お通し作っちゃえばドリンクのオーダー入っても慌てずにできるんだよ。」 キッチンの一番入り口近くの狭いスペースで芳賀さんと二人、ドリンクを作ってお通しをセットしていく。本来なら一人で働くスペースだから二人いると狭い。 ぶつからないように気をつけていても、肩や肘が当たってしまう。横を見上げればすぐそこに芳賀さんの顔があることがわかる。だから芳賀さんの手元ばかり見ていた。 Tシャツの袖から伸びた骨張った腕にほくろが二つ並んでいる。私の手と並ぶとだいぶ大きい手。高校は女子校だったし、男兄弟もいなくて、彼氏なんていたことはない。男の人の手をこんなに近くでまじまじ見たことがなかったとその時気がついた。 その大きな手が器用にレモンを切ったり、ドリンクを混ぜたり。私が両手で持つような重たいボトルも片手でひょいと持ちあげてグラスに注いでいく。 男の人って力あるんだなぁ。
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