完璧な先輩

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「え!〇〇大?」 「そー。でもサボりすぎてさー、卒業できるかわかんねー」 今日も芳賀さんと二人、狭いドリンクコーナーにいる。今日は芳賀さんの苗字以外の情報を仕入れるという大きな目標を持ってバイトに臨んでいる私。早速通っている大学を聞いてみたのだ。 芳賀さんって頭いいんだー。そうだよね…。ここでもテキパキと動いて無駄がないっていうか。教え方もすごくわかりやすいもん。 かっこよくて頭も良くて、優しくて。 こんな完璧な人がいるんだ。さすが東京。 今日は水曜日で一番お客さんが少ない日なんだそう。前回と違って私にも余裕があった。 何よりこの間のバイトが終わってから今日まで、ずっと頭の中で芳賀さんに教えてもらったことを反芻してきたのだから。 「佐藤さん覚えるの早いねー!」 「いえ!芳賀さんの教え方がわかりやすいからですよ。」 「えーうれしいこと言ってくれるねぇ。でもオレ、テキトーだからなぁ。仕事覚えて一人でできるようになったら、自分のやりやすいようにやればいいからね。」 はい。と返事をすると芳賀さんはニコッと笑ってくれた。 ……。 ……………。 あ、シーンとしてしまった。肩が触れるほどの距離で沈黙が続くのは辛いかも。 聞きたいことはたくさんある。彼女いるのかとか、どこに住んでるとか。でもあんまり次々と聞くのも変に思われそうだし、仕事のことで今聞いとかなきゃいけないことってあったかな。
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