完璧な先輩

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その後は店長の指示通り、オーダーを取る時に使う機械の説明をしてもらった。 必死でメモを取っていると 「最初はどこになんのメニューがあるか覚えるのが大変なんだよね。これ開いた状態で写真取っちゃいなよ。そしたら暇な時とかに覚えられるよ。」 「はい。」と言ってポケットに手をやったけど……そうだった。 「スマホ、ロッカーに置いてきちゃいました。」 「あー。今たぶん坂口さんが着替えてるんだよな。」 芳賀さんはさっき店長に絞められて痛いのか首をさすりながら言ったあと、ぱっと顔を上げた。 「じゃオレが今写真撮って送るよ。」 「ありがとうございます!」 やったーーー! うれしーーー! バイト2日目にして芳賀さんのLI□Eゲットできた。 その日は初めてホールに出てオーダーも取った。 「もうすぐラストオーダーの時間でしょ?この時間に来る客はだいたいここが二軒目とか、そんなガッツリ飲む気ないんだよ。たくさんは頼まないから大丈夫だよ。」 芳賀さんに励まされ緊張でガチガチになりながら、なんとかオーダーを取れた。その間、芳賀さんはすぐ後ろにいてくれた。 はぁーっ ドリンクコーナーに戻ると自分の居場所に戻ってきたみたいに安心してため息が出た。 「すごい緊張してたね。声、裏返ってたよ。」 芳賀さんがクスクス笑いながら言った。 「だって緊張しましたもん!」 本当に緊張していた。でもいいお客さんで後ろに芳賀さんがいたので新人とわかってもらえたらしく、ゆっくりメニューを指差して注文してくれた。 「でも間違えなかったし、初回としては上出来だよ。良くできましたー。」 そういいながら芳賀さんが私の頭を優しく撫でた。 三角巾していたけど確かに芳賀さんの手が感じられた。 うわーー!なにこれ!心地よっ! 一瞬のことだったのに頭がほわんと温かくなった。 あの手が…。指が長くて大きい手が私の頭に!手の写真を拡大して見ていた昨日までの自分に教えてあげたい。
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