完璧な先輩

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「ここねー、人があんまり来ないから結構サボれるんだよねー」 いつもの悪戯ぽい、でもすごく優しい顔した芳賀さんが言った。 芳賀さんの手が私の頭にポンポンと触れた。 その途端堪えていた涙がこぼれてしまった。 「落ち着いてから出て来ればいいからね。」 芳賀さんはそのままホールへと戻って行った。 東京に来て初めて泣いた日だった。 辛い思い出だけど、芳賀さんの優しさが身に染みた。ますます芳賀さんが好きだと思った。 芳賀さんのあんな優しさをいつも自分に向けてもらえたらどんなに幸せだろう。 あのかわいい笑顔を独り占めできる存在になりたい。 芳賀さんが好きって伝えたい。 私のことを好きだって思ってほしい。 バイトに行くたびにそう思うようになっていた。
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