完璧な先輩

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そうして、バイトを始めて2ヵ月たった頃。 バイトがない日だったので、友達と遊んでいると、 芳賀さんからLI□E通話の着信があった。 それは初めての芳賀さんからの着信だった。 まわりの友達には私が芳賀さんに片思いしていることは話しまくっていたので、かなり興奮してすぐ出るように促された。 「やば!やば!」と私以上に動揺している友達の顔と、振動するスマホ画面に浮かぶ「はが」の文字とを交互に見てから一呼吸し、決心して電話に出た。 『…はい。』 『あ!佐藤さん?オレ、わかる?芳賀!』 「はい。わかります。どうしたんですか?』 『ホントごめんなんだけど、実は急用ができちゃってさー、今日シフト代われない?』 本当に急なことで少し驚いた。 けど芳賀さんは切羽詰まった様子だったし、いつもお世話になっている芳賀さんの頼みを断る理由などなかった。 『いいですよ。16時から行けば大丈夫ですか?』 努めて明るく返事をした。横で私の顔を覗き込んでいた友達が「え?」みたいな顔になった。 『ありがとう!マジで助かる!次はオレが代わるから!ありがとう!』 通話はあっという間に切れた。 「バイトのシフト交代してほしいって。急用ができたんだって。」 友達に説明すると 「は?今日?え、行くの?」 「うん。ごめん!お世話になってるし、こんなときしか芳賀さんの役に立てないから。」 「その考え方やばくない?それとこれとは違くない?」 納得いかない様子の友達に謝りなんとか許してもらって駅へと向かった。 電車に乗るとさっきの通話が思い出された。 芳賀さんの嬉しそうな声。あのかわいい笑顔になったんだろうか…。 今までたくさん芳賀さんに助けてもらったから役に立てて嬉しくなった。
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