117人が本棚に入れています
本棚に追加
それからあっという間に数時間が経過した。
当初の出逢いからは嘘のように、二人はすっかりと打ち解けていた。
酔いも手伝ってなのか、お互いかなり饒舌だった。
「彼女の今年の誕生日に、何渡したの? 」
「当たり馬券」
「っ? 」
「五万円分」
「……」
深沢は堂々とした顔でそう答えた。
「フカっちゃんてさあ。恋の偏差値、皆無だよね」
痛いところを突かれてしまった深沢は、がっくりと肩を落とした。
そんな彼を柏木が慰める。
彼の背中に手をあて、よしよしと撫でてやった。
「浮気さえしなけりゃ、それで大丈夫だと思ってたんだよなー」
「それもう典っ型的なダメ男じゃん! 釣った魚には餌やらない系だ。彼女に同情しちゃうよ」
そう言い終わると同時に、柏木は腕時計にチラリと目をやった。
「あら。そろそろ閉店か」
最初のコメントを投稿しよう!