EP.1 一寸先は、光

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(わり)ぃ……」 身も蓋もなかった。 「大丈夫、僕は平気だよ。 フカっちゃんはだから。仕方がないよ」 「……のんけ? 」 柏木はふふっと笑いながらどういう意味なのかを教えた。 「異性だけを愛する人のことだよ。その()が無い。だからノンケ」 「あ……ああ。そっか。 俺はなのか。……のんけ」 柏木はウサギのぬいぐるみの中に顔をぎゅっと(うず)め、くぐもった声を出した。 「怒んないからぶっちゃけてよ。本当は僕と 距離を置きたくなったんでしょ? 」 「……」 無言のあと深沢は大きく溜め息をついた。 「そんなことはない。俺にとってお前は大事な相談相手だし、飲み仲間だ」 すると柏木が顔をあげてじっと見てきた。 少し涙ぐんでいる。 深沢は彼に対してありったけの笑顔を向けた……つもりだった。 「フカっちゃん、気持ち(ワル)」 そう毒づいて「ふいっ」とまた横を向いてしまった柏木を見て、深沢はやれやれと口元を緩め再度溜め息をついた。 「さあ、飲み直そうぜ」 「しょうがないなあ」 二人は仕切り直したが、先程よりも少しギクシャクした感じになってしまった。 妙にお互いを意識し合ってしまう。 深沢は気を取り直し、酒の肴としてテーブルに放り出されていたプロセスチーズに手を伸ばした。 その時彼の手の上に、柏木の長くてか細い指が重なった。 思わず身体がびくりと反応してしまい、上に乗っていた柏木の手をそのまま払ってしまった。 「あ」 「……」 時既に遅し。申し訳なさすぎてどうしたらいいのかわからず、直ぐに俯いた。 とても気まずい空気が流れる中で、柏木が口を開いた。 「言わなきゃ良かった。 僕がゲイだってこと」 「……」 「だって」 そこで深沢が顔をあげると、柏木は怒るでもなく真剣な表情で彼の目を見据えていた。 「出来ればフカっちゃんと…… この先もずっと付き合っていきたかったから」 その目からは、堪えきれずにぼろぼろと涙が溢れ出した。 「僕がもしもノンケだったら。 今のだってフカっちゃんは何も意識しないでいられたでしょ」 「大和(やまと)……」 「嘘つき。頭ではわかっていても身体は正直なんだ。きっとフカっちゃんは、僕に恋愛感情を向けられたりするのが怖いんだよ」 「……」 柏木はと睨んでくると、試すようなことを言いだした。 「僕の全てを受け入れてくれるんなら…… おかしいと思わないんだったら。 今すぐここで抱きしめてみてよ」 深沢は息を飲み込んだ。
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