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シーツの擦れる音。
何度も溢れ落ちる吐息。
ギシリと軋むダブルベッドの脚は幾分頼りない。
深沢は柏木の上に覆い被さると、彼の耳元に手をやった。サイドの髪を丁寧にそこへかけてやり熱く息を吐く。
わざとらしくなく……ごく自然に言葉をかけるつもりだった。
それなのに柏木の耳は急に熱を持ち始める。口を半開きにしてそっと深沢から目線を外した。
「なあ、大和。最後の忠告。……本当にいいの? 」
蕩けるほど低くて重厚な深沢の声に、柏木は静かに頷いた。それは耳奥深くにまで響き渡り、そのせいで思わず昂ってしまう。
心も、身体も。細胞の全てまでもが。
お互い相手の指をしっかりと絡め取り、片方の手を固く繋ぐ。
そのままゆっくり顔を近づけると、目を閉じてまたキスをした。
今日出会ったばかりの相手を目の前にしてどちらの胸も高鳴っている。
まるで初体験の時のような錯覚に陥った。
深く、どこまでも深く。
とうの昔、置いてきたはずだった。
あのトキメキに今、狂おしいほど溺れる。
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