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深沢は二人がけのコンパクトなソファにどさりと座ると、加熱式の煙草にスイッチを入れ「しまった」という顔をしながら柏木を見た。
「ごめん、煙草。消す」
「いいよ吸ってても。だからそこにいて」
ベッドの上で正座をしている柏木の顔は、まだほんのりと赤みが残っている。毛布を胸の前に手繰り寄せて一応裸を隠したつもりでいる。
そんな彼の愛らしさに思わず頬が緩んでしまう。
上を向きながら煙草をゆっくりと吸い上げると、息を目一杯吐き出す。天井に向かいゆっくりと広がっていく蒸気を見つめながら、深沢は呟いた。
「悪くねえよな。男とすんの」
それを耳にした柏木は、今までよりも一層表情を和らげて優しく笑いかけた。
それを見るなり、深沢からもふっと笑みが溢れる。彼はそのまま話を続けた。
「なあ大和。さっきお前の手ぇ払ったの、嫌だったからじゃない。
あのままだったら、俺の理性完全にぶっ飛んじまうと思ったからだ。
そこだけは誤解すんなよ」
柏木は深沢の優しさに胸がいっぱいになった。
「知ってるよ、そんなの」
渇いていた心が久々に満たされて、この上なく生きている心地がした。
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