117人が本棚に入れています
本棚に追加
深沢は、テーブルの上でおしぼりをぎゅっと握り締めていた柏木の震える左手に自分の右手をそっと添えた。
柏木は少し戸惑いながら、恥ずかしそうにして深沢の目を頑張って見つめた。
「俺は大和がこの世で一番好き」
柏木がはっとして目を丸くする。
「どこの誰が何と言おうと、俺は大和の全てのパーツが好き。そんでもって……」
柏木は未だおどおどしながら上目遣いで深沢を見る。
それをも慈しむようにして、深沢は言葉を繋ぐ。
「面倒くさいところとか、優しいところもひっくるめて……」
とても穏やかな笑顔で締め括る。
「最高に好き。柏木大和の全てが」
柏木はいつの間にか目頭に溜まっていた熱い雫を幾度も下にぱたぱたと溢していた。
「フカっちゃん……」
もう泣いてしまっているのにも関わらず、まだそれを必死に堪えようとしていて、そう囁くのが精一杯だった。
「他にも食べたいものないか? 注文するぞ」
深沢は照れを隠すようにして柏木からパッと手を離すと、メニュー表を手に取って真剣に目を通していた。
そんな彼の優しさに、元彼が隣にいることなどすっかりと忘れてしまう柏木であった。
最初のコメントを投稿しよう!