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「お母さん」
私は、睡眠薬の瓶を床に落とす。
パリンっと軽い音がして、透明な欠片は茶を吹き出す母親の額へ飛んでいった。
「お母さん」
どんな気持ち?
可愛がっていた娘に手をかけられるのは。
パクパクと醜く口を動かしている。
「何を言っているか分からないよ お母さん」
私は、抵抗できない母に跨ると、胴体に向けて思い切り両腕の力を込めた。
ブシャっ
母に無理やり着せられた白いワンピースが汚れた。
これでいい。これでいいのだ。
ワンピースをビニール袋に押し込み、黒い長袖にしばらくぶりに袖を通す。
ランドセルに本を入れて、学校へ行こう。
そして先生たちに訴えよう。お母さんがいるはずなのに、家の鍵が開かない・・・と。
革靴を履く。
玄関に置かれた鏡に、自分の姿を映し出す。
私は くろねこになった。
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