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白いモチの名前は、モッチタリア。ネーミングセンスが既に終わっている気がするが、本人いわく“高貴な使者”という意味らしい。ほんとかよ。
異星人であるという彼等は、とある恐ろしい別の星の侵略者たちに追われて地球に逃げてきたのだという。この地球は快適で住み心地がよく、モッチタリア達は数百年ばかり地球でのスローライフを満喫していたらしいのだが。
ついに、侵略者たちに見つかってしまったという。そして、モッチタリア達の命を狙っているらしい。何故ならば、とある“恐ろしい洗脳”を全宇宙に刷り込もうとしている彼等にとって、その洗脳を打ち消す魔法をもっているモッチタリア達は脅威の存在に他ならないからだ。侵略者たちに見つかれば、地球に隠れ住んでいるモッチタリア達の種族は殺されるか、操られて彼等の仲間に無理やり引き込まれてしまうのが目に見えている。
だから、地球人に協力を求めて、助けて貰おうとしているそうなのだ。
「じゃあもっと強そうな奴を魔法少女に選べよ!」
俺は思いっきりツッコミを入れた。
「何で猫なんだ!ていうか、完全にお前らとその侵略者の問題じゃねーか、俺ら地球の民を巻き込むな!帰れ!」
「ちょ、ひっど!土下座して頼んでるのに!」
「そのポーズ土下座だったのかよ!」
ベランダの床にスライムのように広がった状態で叫ぶモッチタリア。完全に白い餅の塊が地面にくっついて潰れてるようにしか見えないのだが。
「マジレスするなら、俺、猫の中でも体小さいし、弱ぇぞ?あと、おっさん猫だからもう既にだいぶ体力がねえぞ」
ああ、野良猫時代の黒歴史が蘇る。惚れた可愛いお嬢ちゃんたちは、みんな力が強くてでかい他の猫に奪われていったのだった。猫パンチ一発かますと、十発の連続攻撃が返ってくるような世界である。ついでに、奴らときたら小さい奴にも容赦なく爪を出してくるから頂けない。おかげでせっかく立派なブツを持っているのに、まともに子孫を残せた試しが一度もないのだ!しくしくだ!
まあようするに。
そんな、猫としてみてもひ弱な誰かさんが、魔法少女ならぬ魔法猫になったところで侵略者と戦えるとは思えないわけで。それとも何か、特別な必殺技でも用意してくれるというのだろうか。
「大丈夫だよオシマ君!そこはご心配なく。魔法少女ならぬ魔法猫に変身すれば、必殺技も自動で発動できるよう調整しておいたから!」
むにょーん、と体を持ち上げてモチの塊は言う。
「そもそも、これは君達にとっても死活問題なんだよ。侵略者の恐ろしい計画、それは……」
てれててってれー!という謎のSEが聴こえた。どっから鳴ったんだそれ。
「全人類、犬派にしちゃえ計画!」
「なんだと!?」
「僕達の敵である“わんダフル星人”達は、恐ろしいまでの犬大好き過激派なんだ!このまま地球の民が全て犬派になってしまったら……!」
「お、恐ろしい……!」
仕方ない。俺はぴん!としっぽを立ててモッチタリアに宣言したのだった。
「そのわんダフル星人とやらはどこだ!俺だって猫としてのプライドはあらぁ……!そんな恐ろしい思想を広めようとしている奴らを、野放しになんかしておけねえ。そいつらのところに案内しやがれ!」
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