残念能力は日常の中で。*心が痛む能力*

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「ねぇパァパぁ…『こころ』ってなぁに?」 「んーまた…難しい事きくなぁ…」 肩まで浸かると膝の頭が出てしまう、少し狭い浴槽に何とか身体を沈めながら、僕は息子の質問に悩み込んでしまう。 「んーとねー……ボーはさ、笑ったり怒ったりするじゃん」 「するよ。ときどきね」 「それ」 「ふーん…」 ファストフード店で貰ったクルマの水鉄砲で遊びながら、気のない返事をしたボー。 他のご家庭の『なんでなんで』はどうなのだろう?ウチは大抵こんな感じである。 「ボー。ねぇ『こころ』ってなに?」 「しらない」 ボーの『なんでなんで』は大人に投げつけた時点で完了してしまう。 「ねーボー。パパいつもいってんじゃーん、人に何か聞いたらさー、ちゃんと最後まで話きけよー」 「パパがむずかしいはなししたんでしょー」 「難しくないだろー、パパがさっき何て言ったのか言ってみなー?」 「それはわかんないけど」 「ほらーきーてなーい」 「きいてもわすれちゃうんだよ………パパがいっぱいしゃべるからでしょ……ときどきね」 時々、はボーの中で最近の流行りである。 何か言い方が可愛くて、思わず笑ってしまうので味を占めた様だ。 「ねぇパァパぁ…なんかチンチンがながくなっちゃったんだけど…」 「アホ。いじんじゃないよ、バイキンはいるぞ。おしっこ?」 「……うぅ……まにあわないかもしれない…」 「アホ、何でいつもギリまで耐えるの」 慌てて湯船から上がり、ボーの身体を拭く。 「ほれ、トイレいっといれ」 「いっといれじゃないでしょ、いーかたわるいよ。アホじゃないでしょまったく…」 何かブチブチ言いながらトイレに走っていく。ちょっとした時の言い方がママそっくりである、やっぱり一緒にいる時間が長いからか。 「ニベヤ塗った?」 身体を拭いていると、ママがひょっこり顔を出してそう尋ねた。僕は首を振る。 「おしっこ間に合わないって。ボーがトイレ終わったら塗っとくよ」 「うん、ついでに膝の裏にコフメル塗っといて」 「………ひかがみにって事?」 「なにそれ?」 「膝の裏って、こう…えっと……曲がる方って事?」 「よく分かんないけど多分ソコ。汗疹っぽくなっちゃったの、赤いポツポツあるから」 「あい」 「あとさ、ボーなんだけど…」 「寒いから入ってくんねぇかなぁ?寒いなぁ寒いなぁー」 「じゃあ後でいいや」 浴室の暖気を全て奪い去ってドアを閉めたママ。とりあえずパンツとシャツだけ着て棚からコフメルを取り出す。 保湿の為と、ボーが赤ん坊の頃から入浴後に塗りたくっているニベヤであるがコレは何歳頃までやるものなのだろう?僕も塗っていたのだろうか、記憶は無いが。 「パァパぁ…」 何だか気まずそうな顔して戻ってきたボー。 「どした悲しい顔してぇ?」 またおしっこがトイレから飛び出たか? ボーはギリまで我慢するので、出始めが高頻度でトイレに収まらないのだ。 「パァパぁ、ねぇーおしりあらってぇ」 「ん、なんで?」 「うんちだった…」 「自分で洗えや。ちゃんとトイレにした?」 「でもちゃんとふけてるかわかんないし…」 「なおさら自分でやれや。ちゃんとトイレにしたの?」 「した」 「よしよし…えっと?とりあえずお尻洗ってもう一回お風呂入ろう、身体冷え…」 「ぎゃー!」 ドドドっと足音がして、 「ボー!トイレの床おしっこだらけ!間に合わなかったの!?」 怒号と共にママが顔を出し、三度、浴室の暖気が奪われる。風邪ひくっつーの。 ママの怒気に当てられたボーは実に悲しそうな顔をして「うんちがわるいんだよ?」と、まさか、うんちのせいにする。いかん、吹き出しそうだ。 「おしっこのとちゅうで、うんちでちゃいそうだったから…」 床にばら撒きながら便座に座ったのか。 おぅふ…
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