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「ああ、この猫ね。あんたは知らないんだっけ?」
白い毛並みに茶色い斑模様が入った、ふてぶてしい顔をした猫。
平均的な猫の1.5倍はありそうな恰幅のいい体。
僕はその猫をよく知っていた。
「昔お義父さんが飼ってた猫でね。
たしか……、そうよ、タマ!
あんたが1、2歳くらいの時に寿命で死んだのよね。
あんたこの猫がお気に入りで、よくしっぽを掴んではタマに叩かれてたっけ……」
母が懐かしそうに話すのを聞きながら、僕はああ、そうだったのかと呟いた。
椅子に腰掛ける僕の足元に、するりとやわらかいしっぽが触れた気がした。
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