幼友達

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幼い頃、僕にはいつも一緒の友達がいた。 猫の形をしたそいつは、猫のような歩き方をしていたが、にゃあとは泣かず人間のように話し笑っていた。 母に叱られ泣いていた日も、友達と喧嘩した日も、大好きだった祖父が死んだ時も、いつでも僕のそばでしっぽをゆらゆら揺らしながら寄り添っていてくれた。 そいつはタマと名乗り、テレビで見たチェシャ猫のように目を三日月にして笑った。 母も、父も、祖父も友達も、誰にもタマは見えないようだった。 僕はそれを理解し、人前ではタマと話さなかった。 やがて、小学校に上がりしばらくすると、学校での毎日が楽しくてタマのことを考える時間が少しずつ減っていった。 そして気がついた時には、タマはいなくなっていた。
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