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だから、バチが当たったのだと。白い光に背中を焼かれながら思う。
まだ試合中は終わっていないと言うのに。壊れかけの肩は、最後までマウンドに立つことすらさせてくれなかった。
肩から全身に響く様な激痛に冷や汗を流しながら、ままならない身体に悪態をつく。
監督の指示で誰かに引き起こされた身体が一瞬硬直して、ゆっくりと身体を弛緩させる。
途端に襲ってくる膨大な音を意識の外へとはじき出そうとしても。それはしつこく鼓膜を揺らした。
チームメイトからの心配と不安。
相手チームからの心配と安堵。観客からの混乱と失望。
その中に混ざる女と言う単語に奥歯を噛み締める。
まるで女である事が罪だと言われている気分だった。
苦言を呈する母も。
文句を垂れる選手達も。
嫌悪を向ける女子達も。
私が女じゃなかったら向けられる事のなかった言葉。
……もしも私が男だったら、こんな惨めな最後を迎えなくても良かったのだろうか。
ずっとずっと私の中に降り積もって、奥底に溜まって言っていたモノがじわじわと溢れ出す。
ぽたりと一滴。
耐えきれなかったものがマウンドの土へと落ちていった。
乾いた土は一瞬でそれを吸収して、何も無かったかの様に元に戻る。その上に落ちたもう一滴の雨もきっとすぐ消えてなくなるだろう。
それでいい。これ以上恥を晒したくはない。
どう見ても大丈夫そうではない私に「大丈夫か」と声を掛けてくるチームメイトを無視して、さっきから一度も口を開かない陸へと視線を向ける。
怪我をしたのは陸なんじゃないかってくらい、顔を青くして立ち尽くす姿に声を掛けようとして。
「……ごめん」
何て消えてしまいな声で言われて、口を引き結ぶ。
……それは一体何に対する「ごめん」なんだろう。
それを問いかける前に大人達が動き出した。
片時も私から視線を外さない陸と目が合ったまま。一歩一歩、遠ざかる。
「ごめん」ともう一度、かさついた唇が動いたのを最後に、私は前を向かされる。
歯を食いしばって見上げた空は、加工しているみたいに真っ青で雲一つない。それなのに雨が次々と降ってくるものだから、おかしくて笑ってしまった。
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