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「お待たせしました、厚切りベーコンとナスのトマトソースパスタです」
運ばれてきたパスタは、まさに理想そのものだった。
焦げ目のついた厚切りベーコン。
薄切りのナス。
そして真っ赤なトマトソース。この深い色は、期待できる。
この匂い。私は深く息を吸い込む。
ニンニクが唾液腺と胃を刺激する。
パスタの皿とは別に出てきた器を見て、涙が出そうになった。
たぶん普通は角砂糖入れに使うと思われる白い陶器の器には、粉チーズが山盛りになり、ティースプーンがささっている。
つまり、そういうことだ。好きなだけかけていいのだ。
私は震える手で粉チーズをすくい、さらさらとパスタの山の頂上にふりかける。
もうひとすくい。
もうひとすくい。
かけるたびに私の胸は高鳴る。
粉チーズが私のパスタにふりつもる。
紅のパスタが白に染まる。
これはもう、浄めの儀式だ。
トマトソースがほとんど見えなくなったとき、私は手を止めた。
ティースプーンを置き、そして、神々しいそれに自ずと手を合わせる。
頭を垂れ、呟いた。
やりすぎた。
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