わがはいのご主人様

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「にゃんにゃんにゃん」  わがはいはねこである。  名前は「みあ」。  どこで生まれたかというと、東京の隅っこにある病院。あんまり言うと実家がバレそうなのでやめておく。  ママはお金持ちの家の子だった。1人ぼっちでわがはいを産んだけど、生活には困らなかった。  ツナ缶、魚肉ソーセージ、時々お刺身……ご飯は毎日美味しかった。  そしてわがはいは、何をしても可愛い可愛いと言われてのびのびすくすくと育った。  気ままに数日散歩に出かけて、帰らない日もあったけど、わがはいは許された。  だからわがはいは、自分が可愛いことを幼少期から悟っていた。 「にゃんにゃんにゃん!」  そう言って愛想を振り撒いていれば、誰かが守ってくれた。 「はにゃー?」  外に出ればいじめられることもあったけど、すっとぼけて知らないフリをした。 「みゃうみゃう!」  そうしてだんだん時は経ち……。 「にゃーんにゃん」  わがはいは家を出ることにした。 「みゃーみゃーみゃー」  知らない街で媚びまくって……。 「にゃんにゃんにゃん」  冷たい風の吹く夜も、自分を拾ってくれる人を探し歩いた。 「にゃんにゃん、にゃ……?」  そうしてわがはいを拾ってくれたのが、今のご主人様だった。  ご主人様はわがはいを家に連れ帰ると、わがはいをお風呂に入れ、暖かいミルクをくれた。それからわがはいに鈴の着いた首輪を着けた。 「可愛いね、これからずっと一緒だよ」  ご主人様は大きくて暖かい手で、わがはいを撫でてくれた。 「そういえばお前、名前は?」  ご主人様がそう聞いてくるので、わがはいは答えてあげた。 「みあ!」 「あはは、みあか……いい名前だね」 「にゃん!」 「みあ、みあ……可愛いよ」  ご主人様がわがはいの名前を呼ぶ度に胸が高鳴って、ご主人様に可愛いと言われる度に今までより何倍も嬉しくなった。 「みあ、ほら食べな」 「にゃーん!」 「美味いか?」 「みゃ!」  この世界の食べ物はお魚だけじゃない。お肉にカップ麺、フライドポテト……美味しいもので溢れてる。 「みあ、今日も一緒に寝よう」 「みゃーう」  ご主人様がそばに居てくれるだけで幸せだった。  いつしかわがはいは、幼少期の頃のことなんてほとんど忘れてしまった。
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