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「本来なら麗華さんと嫁に頼もうかと思ったんだけどな」それはそうだろうな。
「けど、木崎さんが同行するとなるとちょっと問題だな。ここは俺が行くか」
「お兄さんが行っても大丈夫なんですか?」
「まあ。この会社の担当だしな。それに恐らく詳しい話をするのは麗華さんになるだろ?」そこまで言うとお兄さんは言葉を切って、少し考え込み始めた。
「──ああ、でも木崎さんが同行してくれてよかったのか。お役所だもんな、男がついて行ったほうがいいかもしれない」
「どういう意味ですか?」
「お役所なんてどうせ遅れた男社会だからよ。もしかしたら麗華さんが女ってだけで舐めてくるかもしれない。だったら同席するのは嫁より俺のほうがいいなって。少しは牽制できるだろ?」
なるほど。確かにそうかもしれない。
「木崎はなんの役だよ?」清川さんが尋ねた。
「そりゃ麗華さんの秘書しかねえだろ」
「だったら真中さんから貰ったスーツ着て行けよ。その格好で行くなよ」清川さんは何故か俺に真顔で言った。
「もちろんそのつもりです」そう答えたけど、そんなに変なのか? この格好。
「──お待たせ! ささみとキャベツのピリ辛和えともやしのナムル。あとはごぼうと胡桃の西京味噌炒めだよお」
清川さんは「おー!」と声をあげ、待ってましたとばかりに箸を手に取った。今日も美味そう……美味そうだけど
「譲葉、今日はなんだかアッサリ系じゃないか?」
「うん。お兄さんが中性脂肪と尿酸値が高いって聞いたから」
「はあ!?」お兄さんが変な声をあげた。「だ、誰から聞いたの!? そんなこと!」
「多美子さん。奥さんが言ってたって。だから気をつけてあげてねって言われた」
くそう、とお兄さんは呟いた。「俺がキヨと一緒に飲むのを楽しみにしてるって知ってるくせに」
「心配なんだよ」譲葉は笑って台所に戻って行った。「もうすぐ鯖のポン酢南蛮漬けを持って行くから」
「南蛮漬けならいいじゃないですか?」
俺はお兄さんにそう言った。
「俺は霜降り肉とか魚卵が食べたいの!」
うん。それは無理だな。値段的にもここでは無理。
「譲葉チャンのつまみはめっちゃ旨いから」清川さんは慰めるようにそう言った。お兄さんは「そうか?」と元気なく言っていたけれど、すぐに譲葉のつまみのファンになっていた。
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