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俺は重い足を引きずってアパートに戻った。急いで夕飯の支度をする。204のおっさんもマシュマロマンも手伝ってくれた。助かった。みんな待ちきれなかったようで、103号室に様子を見に来た。104の酒乱のおっさんですら顔を出した。悪態をつくのは忘れなかったけどな。
用意が終わると俺は長いため息をつきながら腰を下ろした。
「どうかしたんですか?」204のおっさんが声をかけてきた。
「まあ、いろいろ」俺はなんとなく答えた。
「帰ってきてから様子が変ですよ?」
「そうかな?」俺は薄く笑った。何も思い浮かばないし、俺はこのアパートのことで手一杯だ。八重さんの言ってたことも気になる。だが、やはり早く処理しなきゃならないことは、あの三人組のことだ。
「元気ないです」マシュマロマンが突然そう言った。
「自分の手に余ることが起きてね」俺はつい愚痴が出た。
「だったらその専門家に聞くのが一番早いです」マシュマロマンは真顔で答えた。
「そうそう、餅は餅屋ってね」204のおっさんが付け加えた。「自分より詳しい人に頼るのが一番だよ。自分もそう出来ればよかったんだけど。気がついたら、もうそういう時期は過ぎてた。だから早めに相談したほうがいいよ」
二人とも俺の顔を見ながら何度も頷いた。
そうか? そういうものなのか?
「頑張ってくれてるのは分かっているが、お前さんはまだ若いだろう? 年寄りの言うことは聞いておくもんだ」俺たちの話を聞いていた103の爺さんはそう呟いた。
俺は詳しい専門家について思いを巡らせた。それについて詳しい人物──ひとりしか思い浮かばなかった。
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