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それよりも、先生の家の裏に建つ古い家を解体しておられまして、その埃と騒音が凄く、お手伝いの希世さんは、
「洗濯物が汚れて仕方ない」
とご立腹で少々機嫌が悪いのです。
そのお陰で、出汁を取り忘れたお味噌汁が出たり、やたらと塩の効いた煮物が出たりと、私も先生も少し困っております。
先生が裏の家を壊しておられる地主さんに話をして来られたのですが、申し訳程度の衝立が立っただけでした。
二軒続きの大きな旧家でしたので、かなり解体に時間も掛かっている様で、先生の家の横の細い路地も大工がネコを押して解体した家の屑を運び出しておられます。
ネコと言うのは手押し車の事なのですが、古くは中国の木牛と呼ばれるモノが始まりで、諸葛孔明が発案したモノの様です。
これは先生が教えて下さいました。
「要君、要君」
と、何処からか先生の声がしました。
私は腰を上げて玄関の方へと参りました。
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