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そんな伝説級のエドワルドとの出会いは、メルセデスが八歳の時に実の両親が不慮の事故で亡くなった事にある。
当時メルセデスが住んでいた『魔導士の村』は高齢化が進み、誰も彼女の面倒を見れる者がいなかった。突如孤児となってしまったメルセデスは厄介者扱いされ、生活はどんどん荒んでいき、いつ売られるか死ぬかわからない状況だった。
そんな中、どこで聞きつけたのか師匠の子供のピンチを救いに来たのが、当時まだ二十代前半だったエドワルドだった。
彼はメルセデスの後見人として名乗りをあげ、滅びゆく陰気な村からメルセデスを連れ出してくれたのだ。
エドワルドはぶっきらぼうながらメルセデスをひたすらに可愛がり、二人だけの家族として十年間共に過ごした。
体内に宿す神聖力の強さは、自身の持つ博愛がどれほどあるかによるという研究者もいる。
今のところ諸説あるうちの一説に過ぎず、立証はされていないものの、いくら師匠の子供だといって自分の最もいい時期を子育てで奔走していたエドワルドを見ると、あながち間違った説ではなさそうだ。
メルセデスはなんの疑問もなく『エドワルドと自分は、このまま結婚するのだろう』と、ずっと確信していた。
エドワルドは十年の間に特定の恋人がいた様子もなく、任務が終わればメルセデスのいる家に常に真っ直ぐ帰ってきた。
意を決して一度エドワルドに「恋人を作らなくていいのか」と尋ねた事もあったが、答えは必ず「俺は、メルで手がいっぱいだ」と、笑って言ってくれていたので完全に『自分は女としても愛されている』と、すっかり勘違いしていたのだ。
(勝手に期待して、勝手に真に受けて……バッカみたい)
"大切な人"という概念が他人同士だと認識が大きく異なるなど夢にも思わずに、自分の都合よく物事を考えてしまうのはメルセデスの昔からの悪い癖だった。
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