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8ー9 再会
そこは、何もない空間だった。
白い、奥行きも幅もわからない空間だ。
俺は、そこを漂っていた。
俺は、心の中で強く念じた。
神木へ。
はやく、たどり着かねばならない。
「珍しい客だな」
突然、どこからか声がきこえた。
目も前に白いローブをまとった少女が現れた。
それは、白い光が人の姿をしたような存在で、俺が勝手に少女だと思っただけで、他の者がみれば何かを別のものにみえるのかもしれない。
その何かは、俺を覗き込むときいた。
「何が望みだ?『聖王』よ」
「レクルスを・・俺の息子を探している」
「息子?」
それは、目をすがめた。
「なるほど、仔細は、理解した。すぐにお前の望みを叶えよう」
「マジで?」
それの言葉に、俺が安堵するのをきいて、それは、にぃっと笑った。
「喜ぶのはまだはやい。我は、奪う者。お前から何かを奪わねばならない」
「なんでもくれてやる!」
俺は、叫んだ。
「レクルスを取り戻せるなら、なんだってくれてやる!」
「なんだって、か?」
それは、ふいに興味をなくしたような顔をした。
「つまらん。お前の心に嘘はない。お前は、なんにもそれ以外を欲してはいない。意味のないものは、奪っても仕方がない。貴様からは、何も奪えない。だから、お前からは、時を奪うことにする」
「時を?」
「そうだ」
それは、俺には言った。
「我は、お前からその寿命を10年分もらうことにする」
寿命を10年分?
マジか?
俺は、ただでさえもおっさんだ。
そんなに寿命を奪われたら、すぐにでも死んでしまうかもしれない。
それでも。
俺は、承諾した。
「いいだろう。俺の寿命を10年くれてやる!」
俺は、言い放った。
「はやくレクルスをよこせ!」
「いいだろう」
それが答えた。
「いくがいい」
俺の目の前に光が溢れる。
「さあ、行け。聖なる王よ。そして、その欲するものを手にするがいい」
俺は、光の渦へと飲み込まれていった。
そして。
気がつくと俺は、あの草原の中の一本の巨木の下に立っていた。
「ここは」
俺は、辺りをきょろきょろと見回した。
巨木の影から何かがひょこっと顔を出した。
「父様?」
「レクルス?」
木の根元からレクルスが姿を現した。
その久しぶりに見る銀色の髪に俺は、胸がつまった。
「レクルス!」
「父様!」
俺は、飛び付いてきたレクルスを抱きしめた。
「すまなかった1人にして。これからは、ずっと一緒だ」
「うん、父様」
レクルスが俺にぎゅっと抱きついてきた。
「ずっと、ずっとだよ」
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