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1ー5 生き物係
しかし、なんとか国王様に泣きついて事なきを得たのであった。
以来、俺は、奥さまに口が酸っぱくなるほど言い聞かせていた。
「酔っぱらって『通販』しては、いけませんよ、奥様。特に、生物はダメですからね!」
俺にそう言われて、しばらくは、しゅんとしていた奥様は、今のところは、フェンリルに続く災厄を起こしてはいない。
俺もホッと一安心している。
俺は、両手を開くとリツを抱き締めてわしゃわしゃと撫で回した。
「お前は、ほんとにかわいいな」
「きゅうううん」
言っとくが、奥様が『通販』で手に入れられた生物は、フェンリルだけではなかった。
そして、基本、奥様は『通販』で生物を求められても省みられることはほとんどない。
しかし、生き物を放置するわけにはいかない。
だから、自然と俺がこれらの生き物の世話をすることになった。
まあ、ここにきて俺のテイマーとしての能力が役立ったわけだが、なんか、複雑だった。
奥様は、このリツの他にも、『通販』でいろんな生物を求められている。
巨大な猫の魔族であるフィオルの子とか、巨大な鳥の魔物であるガラマンディとか。
どうやら奥様は、大きな生物が大好きな、心優しいお方らしい。
ただ、面倒はみないけどな。
俺は、立ち上がると勝手口から外に出て裏にある獣舎の方へとエサの入った桶を抱えて歩いていった。
獣舎の中には、何頭もの珍しい巨大な魔物たちがいた。
俺は、順番にエサをやると、生活魔法で水を出してやった。
獣舎の一番手前にいるのは、ガラマンディだった。
ガラマンディは、蠍の尾を持つ巨大な鶏だった。
その毒は、人を石化させるとても危険な生き物だ。
だが、俺がよるとガラマンディは、コケっと鳴いて俺に頭を擦りつけてきた。
俺は、水を与え、エサの新鮮な果物やら、野菜やらを桶にいれてやりながら、ガラマンディの鶏冠のはえた頭をそっと撫でてやった。
「よしよし、腹減ってたのか、ルド」
「遅い!遅いぞ、ティル」
不意に声がして振り向くと、獣舎の入り口の扉の影から猫耳の獣人が姿を現して不機嫌そうに俺を上から睨み付けた。
うん。
俺は、頷いた。
別に、見下ろされたからといっても決して、俺がチビなわけではない。
こいつらが、でかいんだ!
「なんだ?テオ」
「腹が減った。はやく、飯をよこせ」
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