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8ー4 来訪者
俺がシロアを受け入れてから、しばらくの時が過ぎた頃のことだ。
俺が魔王城の自室で子供たちと過ごしていると、急に部屋の一角の壁が白く発光し始めた。
「父様!」
少しだけ怖がりなエリエルが俺にしがみついてきた。
ルーミアとレクルスは、俺たちを守るかのように壁との間に立ち低い唸り声をあげていた。
壁の光の中から、古めかしい木製の両開きの扉が現れた。
俺たちが固唾を飲んで見守っていると、その扉がゆっくりと音をたてて開いた。
光とともに現れたのは、懐かしいテオとガイの姿だった。
「ティル」
「テオ、ガイ」
俺は、信じられなくて。
しばらく呆然として2人が歩み寄ってくるのを見つめていた。
2人の暖かな手が俺に触れた時、初めて俺は、それが夢ではないことを知った。
「テオ!ガイ!」
俺は、2人を両手を広げてぎゅっと抱き締めた。
俺たちは、少しの間、お互いを抱き締めあっていた。
だが、じきに扉の向こうから誰かが叫んで俺たちは、はっと気づいた。
「はやく!急いで!」
それは、奥様の声のように思われた。
俺たちは、名残惜しげに体を離した。
テオとガイは、俺の足元に隠れている3人の子供たちを見た。
「これは、お前の子供たちか?」
怯えるエリエルを抱き締めてこちらをきっと見上げているルーミアと、1人立ってテオたちに牙をむいているレクルスを見てて2人が訊ねたので、俺は、頷いた。
「ああ、俺の子供たちだ」
「これは、俺の子だ」
テオがルーミアとエリエルを見て呟いた。
「間違いない。まさしくフィオルの子だ」
「こちらの銀髪は、私の子のようだな」
ガイが、こちらを睨み付けているレクルスを見つめて目を細める。
レクルスには、ルーミアたちのような一目で獣人とわかるような特徴はなかったが、最近、額に2本の小さな角がはえてきていた。
「もしかして、父上様?」
ルーミアがきいたので俺は、頷いた。
「ああ。この人たちは、お前たちの父上様たちだよ」
大きな猫耳をふるふるさせてルーミアとエリエルがしっかりと抱き合ってお互いの尻尾を絡ませあってテオのことをじっと見上げていた。
「テオ父上様?」
「そうだ」
テオが感極まった様子で子供たちを見つめていた。
「これは、俺の?」
「そうだ」
俺は、どこか誇らしく思っていた。
「この子たちは、お前たち2人の子だ」
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