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神の身のままでは、人と同じ豊かな感情を持つことはなく、泣くこともできない。寂しい、楽しいといった気持ちは分かっても、心を揺さぶるような激しい感情は抑えるよう言われていたからだ。
強い力を持つ者は、その感情に引きずられて災害を引き起こしてしまう。力の暴走を起こした者は処罰され、未来永劫牢に繋がれるのだ。
彼はよく声を上げて泣いていた。その気持ちを知りたいと思った。
私は、彼とよく過ごしていた縁側に腰掛け、彼のことを思う。何百年と経った今も、彼のことは鮮明に思い出せる。
表情がころころとよく変わる男だった。
皆にも優しかったのだろうけれど、狐は油揚げが好物だと聞いた、と手土産を持ってきてくれるのは彼だけだ。照れ臭そうに笑いながら頭をかく姿も目に焼き付いている。優しかったそんな彼が愛おしく、今隣にいないことがこんなにも悲しい。
その時、目から雫が溢れた。
これが涙だ、と思うけれど封印していた気持ちがあふれ出したからか、涙はあとからあとからこぼれ頬を濡らす。
私は、初めて声を上げて泣いた。
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