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「あ、ジョウさん、また昼寝の時間に本読んでるんじゃない?」
「困るなあ」
二人の介護士がジョウさんの部屋に走って行った。
「ジョウさん、今はお昼寝の時間ですよ。本を読むのは後にしましょうね」
赤ん坊じゃあるまいし、そんなに長い時間昼寝なんかできないよと、ジョウさんの声がする。
「それが決まりですからね」
「決まりはちゃんと守らなきゃ」
部屋で静かにしてれば、昼寝でも読書でもいいんじゃないかと、ジョウさんが言う。
「誰か一人に勝手を許してしまったら、他の人に示しがつきません」
「昼寝の時間に読書をするなんて、ズルだっていう人もいるかもしれませんよ」
ジョウさんは、もう何も言わなかったようだ。
そして、二人の介護士が満足げな顔でミーティングルームに戻ってきた。
(終)
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