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守る
絶賛ノンケ陽大に片思い中!!
と、言うのも……物心着いた時から陽大といつも一緒に居た。陽大は三つお兄さんだったが、当時は気弱で泣き虫で放っておけない、守りたいと思う存在だった。
思春期の頃、陽大と接していく事で俗に言う恋してるという状況になっている事を感じて、自分がゲイだと知った。それからは単なる幼なじみとしてではなく、完全に恋愛対象として見るようにもなった。けれど……陽大は異性が好きなノンケ。この気持ちを告白できるワケもなく、ただただいつものようにそばで幼なじみとして過ごし、見守ることしか出来ずお互いに大人になった。
今でも思い出す……。
「つぐたかぁー!また、なんか……変な感じするっ」
「えっ!?泣かないで陽大。ほら、こうしてると落ち着くだろ?」
あの頃、何度も何度も変な感じするとびゃんびゃん泣いていた。変な感じというのが正直どういう類の物かは分からなかったが、混乱して泣く陽大を抱きしめて背中をさすると安心したように落ち着いていた。
それからは、陽大のそばに居ることが一番良いんだとわかり、いつでも支えられるように小中高と同じ学校へ行った。
そんな中で、複雑な気持ちも増していった。単に幼なじみだからそばにいるわけじゃない。好きという気持ちが大半を占めていた。女の子と陽大が話していたり、登下校していたり、席が隣だったり……些細な事で嫉妬の気持ちを抱くようになった。それでも、気持ちを心の奥底にしまい蓋をして、良き幼なじみとしてそばに居られるように頑張った。
今思うと……アレは幼少期の頃からだったのかもしれない。
◇
そんな気苦労を重ねながらも、陽大は27歳、嗣貴は24歳となり、大人の今も同じ会社で働いている。幼なじみでありながら会社では先輩と後輩という関係だ。
そして今日もいつも通りの平凡なサラリーマン生活を送っていた。いつもの時間に出社し、業務をこなす。何の変哲もない、代わり映えのない日常……である、はずだった。
課長に呼ばれて席を立った陽大がしばらくして戻ってくると顔は青ざめ、身体は小刻みに震えていつもと違う雰囲気に危機感を覚えた。
「すみません、茉吏先輩が具合悪そうなのでちょっと……」
他の社員はそう伝えると、陽大の手を握り部署を出て廊下をまっすぐ歩いて進み、とある場所へと向かった。
こんなに震えて、泣きそうな陽大は高校生以来。学生の頃の記憶がフラッシュバックし、また強く心に誓った。
───やっぱり……陽大の事は俺が支えなきゃ。
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