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始話 マタタビスープ店
とある森の奥にひっそりとたたずむお店、なんでも注文の多い店と話題らしいにゃ。
ワタクシそのお店の主、好物のマタタビスープをふるまうのがワタクシの仕事。
それは誘惑との格闘、いや、誘惑とのガマン比べ。
秘伝のマタタビ壺から適量お玉で濃縮エキス、ゴクリ、だ、ダメにゃ。飲んだら最後、天国と地獄を同時に見る事になるにゃ。
香りに釣られてパープルキャットがやってくる。
「おーい、オヤジ。マタタビスープを一杯」
「かしこまりました、どうぞお待ちください」
パープルキャットはうっとりと。
「しかし、頭がクラクラする良い匂いだな」
「そうでございにゃすか」
ワタクシは秘伝の、ゴクリ、いや、マタタビ漬けの壺から適量お玉ですくうと、マタタビの実ひとつと、マタタビ漬けを煮たスープを一杯作りに取りかかる。
香りはワタクシにとっても陶酔する極楽。やかんのお湯を沸かして、秘伝のマタタビ汁と沸かしたお湯を。
「おーい、金ネコー、まだかー?」
「ええ、少々お待ちください、今ただいま調理中です」
むっ、いかん。この秘伝のマタタビ漬けの壺を奪われたら商売あがったり。ゴクリ。
秘伝の壺のフタを閉めてしばし極楽の香りも度が過ぎれば地獄になる。ワタクシ頭をブルブルと振って考える。
お客さんは、ただマタタビ1個と秘伝のタレを薄めた湯を飲むだけ、なのだけど、ネコ舌がその熱いスープとマタタビ攻めのせめぎあいに葛藤するわけで。
「オヤジもう一杯。はー、マタタビ最高」
「お客様。暴食はオススメしません、お帰り下さい」
「なんだと!!」
先客のシルバーキャットが睨みをきかせる。ワタクシ、マタタビ壺の悪夢にあわせたくないとゴクリ。
「ちっ、注文の多い店だな」
シルバーキャットはお店から立ち去る。ドキドキしたワタクシは、パープルキャットのお湯が沸いたのて適量注ぐ。
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