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「そっか。君は、もう大丈夫なんだ。なんだか、つまんないなー」
柏木は俺に対して言葉を与えなかった。ただ、嬉しそうにストローを咥えた。
俺は、いつからか大丈夫になっていた。それをいつ柏木に伝えようかずっと考えていた。
「何でだろうって、ずっと考えてた」
もう口に出してしまっていた。
「どうしたの? あれ、やっぱり大丈夫じゃないのかな」
俺の声が少し深刻そうに聞こえたからか、柏木は少し顔を上げた。氷がカラカラと音を立てる。
「柏木は、どうして俺の話を聞いてくれる?」
「それ、ずいぶん前にも聞いたよね。変わらないよ。君と話すと楽しいから。」
そうだった。俺は以前にも一度、勇気を出してこの質問をしたことがある。
その時は「俺なんかの話」だった。そして、その時も「楽しいから」だった。
「俺の話は、お世辞にも楽しい話ではなかったよ。」
俺がした話は、命の話だった。
「楽しかったよ。だって、君、凄い深刻そうな顔してるんだもん。そんなに思い詰める必要ないのに、必要以上に自分を追い込んでさ、おかしいなーって」
「ふつうはさ……」
「ん?」
「俺みたいに追い込まれた人間が柏木みたいなやつに、そんな風に笑われたら傷つくんじゃないかなって考えてた」
実際、初めて俺が悩みを打ち明けたとき、柏木は笑っていた。
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