午前7時、雪のホーム

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 虫の知らせや嫌な予感なんか一切なく、訃報は突然だった。  昨日の昼、彼のお母さんから電話をもらった時は、心臓が止まりそうになった。そのまま止まってしまえばよかったのだけど、残念ながら失神して倒れるだけに留まった。  出張先で交通事故に巻き込まれて、苦しまずに。お母さんの声は、泣きながら笑っていた。私を気遣ってくれたのだろう。結婚式を2か月後に控えた、娘になる予定だった私を。  コートの上から、左腕を摩る。肘の内側の内出血が痛むと、まだ生きていることを思い知らされる。点滴なんてしてくれなくてよかったのに、と思っても、気を失っていたんだから断り様もない。 「………。」  もう、溜息すら出ない。涙も枯れてしまった。  これから、どうしよう。青ざめた彼の顔なんて、とても見られない。  昨夜、病院から電車で帰宅する折に、落ちるイヤホンを目にして思い付いた計画は、天候という恨みようもない相手に阻まれてしまった。  葬儀が始まるまで、あと3時間。それまでに、他の手段を探さなければいけない。  私は、彼に会いに行く。  優しく笑う、あたたかな手をした彼に。
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