午前7時、雪のホーム

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 老紳士は私の顔をじっと見てから、柔和に笑んだまま頷くと、徐に私の隣へ腰を下ろした。  えっ、と驚きの声すら上げられない私に、 「実は、僕も人混みは苦手でしてね」  と、申し訳なさそうに眉を下げた。  ベンチの端で膝の上に大きな荷物を抱える様に、ふと、狭いホームにはベンチがひとつしかなかったのを思い出す。この人は、ベンチが空くのを待っていたのかもしれない。  慌てて立ち上がろうとすると、老紳士は首を傾げるようにして私の顔を覗き、 「ごめんなさいね、こんな爺さんと。でも、少しだけ付き合ってくださいませんか。人気が引くまで、もう少しだけ」  柔らかな物腰で語りかけるように言われ、私は脱力した体をもう一度ベンチに預け、いくらか端へずれた。  男性は「ありがとう」と頭を下げたが、ふたりの間にできたスペースに、抱えた荷物を下ろすことはなかった。
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