午前7時、雪のホーム

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 ホームを行く人々が階段に吸い込まれていく中、私と老紳士はふたり並んで座って、降りしきる雪を見ていた。線路脇に積もった雪が風に舞って、ささやかな地吹雪を起こしている。  線路の向こう、フェンスの裏にある駐輪場の東屋も、重い雪を背負って静かに耐えていた。  あの駐輪場に自転車を停めて、彼はよく私の家に来た。1時間に数本しかない電車に乗ってきては、駅に置いたままの自転車を走らせて。  本当はその都度、持ち帰らなければいけないのだけど、駅員とあっという間に打ち解けてしまった彼は、週に一度、恋人に会いに来るのだと話して、こっそり許してもらったのだと嬉しそうに言った。  冬になると、自転車も駐輪場を恋しがっている、と、改札の前の自販機で買った紙コップのコーヒーを片手に、雪深い駅前を歩きながら笑った。  その彼は、もうどこにもいない。  彼の自転車が、あの駐輪場に来ることも、もう。
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